根暗くん

 

  小山田壮平本郷奏多窪田正孝を合わせた雰囲気の男の子に勝手に「根暗くん」と名前をつけて隠れファンをやってる。もちろん話したことはないし名前も最近まで知らなかった。

 

  根暗くんはサラサラの黒髪で横顔が綺麗で細くて170センチないくらいの人。初めて存在を認識したのは4月ごろに同じ教室にやったら横顔が綺麗な人いるなあと気付いたとき。私と同じグラフィック専攻一回生で、3つある必修のクラスのうち月曜1・2限のクラスがひとつだけ同じ。その必修はMacintosh厨の先生が淡々とAdobe(IllustratorPhotoshopなど)ツールについて説明をするつまらなくて眠い授業。私はこの授業が嫌いだけど根暗くんも同じクラスにいると思うともうちょっと頑張って出席しなきゃと思う。

  根暗くんはたぶんサークルに入っていない。芸術祭期間でも一度も見かけなかった。彼は大学で交流を求めていないみたい。

  だいたいどこの美術大学でもグラフィックデザインの学科は男の子が少なくて、消極的な男の子同士でどうしても固まってしまうみたい。誰もそこから出てこようとする気配も無いしこっちから入り込むのなんか絶対にできない。お話ししてみたいんだけどな。でも普通に生活していればまず関わることはない。

 

  数人で飲みに行ったとき。男の子の友達に根暗くんを推しているということを話したら、「根暗くんはスケベだからやめとけ(笑)」と少し否定的な意見をもらった。どういうところがスケベなのかわからないけどそれを聞いたら余計に好きになってしまった。

 

  1週間ほど前のお昼やすみの話。授業が長引いてお昼ご飯遅れてしまうなと思っていたら、いつも一緒に食べてるKちゃんからLINEが来た。

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 Kちゃんには前から私が根暗くんを推していることを話していた。私たちはいつも小さな丸いテーブルを囲んで座っていたから、すぐ隣のテーブルに根暗くんが座っているところを思い浮かべながら食堂へ向かう。

  カレーライスを乗せたトレーを持ってきょろきょろしているとKちゃんが私の名前を呼んでこっちへ来た。Kちゃんはかなりニヤニヤしながら「ヤバい、あみ(私の名前です)の反応想像したら面白くて」と言いながら席を指差した。指を指している方を見るとそこには一つの長方形のテーブルを囲んで座っている友達2人とKちゃんの席、すぐ隣に根暗くんとそのお友達のみなさんがいて、根暗くんの目の前の席だけ一つ空いてる。これはたいへんだ と思った。 その日は雨で前髪がダサかったし安くて具材が何もないカレーライスを適当に買ってしまったし福神漬け入れすぎちゃったし彼の前でカレーライスどうやって食べればいいんだ……とか一瞬でいろいろな思いが頭の中を駆け巡った。彼の横側や後ろ姿はよく見ていたけど正面から見たことなんてほとんどない、ましてやこんな至近距離で。逃げたい気持ちと戦いながらなんとか冷静を装った。結局どこを見ればいいのかわからなくてただただカレーライスを見つめていたらお昼やすみが終わった。

 

  大学生になってからこんな気持ちを味わうとは思ってなかった。まるで中学生みたいな言動をしている自分が可愛いし恥ずかしい。ストーカーみたいで気持ちわるい。

  根暗くんがどこかにいるんじゃないかときょろきょろしてしまうくらい好きだけど、これは恋心なのか? 好きな人 というよりは アイドル みたいな感じ。これがもし恋なら話したことすらない人を好きになってしまった自分に引いちゃう。それに私には2年間くらいだらだら好意を持ってしまった人がいるし… (最近LINEをブロックされたので落ち込んでる)

 

  最近はこんな感じでキャッキャやってるけど私は遠くから見てるんじゃなくて仲良くなってみたい、お話ししてみたい。どんな人なのか気になるから。このまま勝手にアイドルみたいな扱いしてたらいつまで経っても仲良くなれないと思ってる、だからキャッキャするのは少し控えめにすることにした。

  なんでこんなに気になるんだろう?先生おしえて。