二回生の根暗くん

二回生になってから必修科目のクラスが少し変わって3つの授業のうち2つが根暗くんと同じクラスになった。だけどやっぱりひとことも会話することなく前期が終わってしまった。話をするきっかけが恐ろしいほど何もない。だけどそこまで不満もない。彼は私にとって〝身近なアイドル〟的存在で、見てるだけで十分、という感じがある。一回生の頃よりも会える(一方的に眺める)機会が増えたおかげで近距離で彼の顔をちゃんと見れるようになった。そのぶん、レア感が無くなってしまったのか前ほどドキドキしたり緊張しなくなった。

必修はほとんど毎回先生の講評を受けて授業が終わる。美大でいう講評とは、出された課題の内容に対してみんなそれぞれ考えたデザイン案を形にしたものを持ち寄り並べて、先生も学生も他の人の制作物が見える状態で先生のアドバイスなどを挟んだコメントを聞く会。そこに出席している学生は、ひとことも聴き逃すまいと熱心にノートにメモする真面目な人もいれば、聞いてるふりをしてケータイをいじっている人もいるし、課題制作による疲労と睡眠不足のおかげでぐっすり寝ている人もいる。

自分の制作物の講評ではコンセプトや制作意図をみんなの前で言わなきゃならない。そこでただのクラスメイトとして同じ空間にいた関わりがない人たちの好きなものや意外な趣味などがあばかれたりするのが結構面白いし好きな瞬間。だから私は小さい声で話す根暗くんの講評は毎回しっかり聞くようにしている。

 まず意外すぎる彼の趣味が、ランニングとサイクリング。しかも毎朝5キロ走っているらしい。あのカラダが細い根暗くんが毎朝早く起きて走っているなんて。他にも、「あ、この前、免許とったんで、最近はドライブとかも、よくします」とか言っていた。もう運転できるんだ根暗くん、かっこいいし可愛いな。もう全部肯定してしまう。すごく健康な青年で、私の方がよっぽど根暗だなと思った。勝手に偏見で名前つけてしまってごめんね。

気づいたらすっかり真夏で、根暗くんもついに白Tとか着るようになってさわやか。ふと足元見たらKEENのサンダルが…  

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おしゃれ… 正直ちょっと虫っぽくて本当に可愛いのかなこれと思っていたサンダルだったけど彼が履いてたらめちゃくちゃお洒落で素敵なものに見えた。また全肯定。私も買っちゃいたい。

こんなに語っていると本当にきもちわるい女だと思うからそろそろ彼と会話しておきたい気もする。恋じゃないとおもうんだ、わからないけど。